火山の基礎知識

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火山の災害にはどんなのがあるの?

火山の災害にはどんなのがあるの?(直接的なもの)

 地火山の噴火で直接的または間接的に様々な災害が発生します。


噴石

 火山から噴出した岩石や火山灰を火山砕屑物や火砕物、又はテフラと呼びます。大きさによって直径が64ミリより大きいものを火山岩塊、64ミリ~2ミリのものを火山礫、2ミリより小さいものを火山灰と呼びます*11。数センチよりより大きいものは一般的に噴石と呼ばれることがあります。気象庁では火口から風の影響を受けずに弾道を描いて飛散してくるものを「大きな噴石」、それよりも小さなものを「小さな噴石」と呼び分けています*12
 2014年御嶽山噴火での犠牲者のほとんどが、噴石が頭や体に当たった事に起因して命を落としたとされています*13

火山弾

 マグマ噴火では、溶けた溶岩が直接飛んでくることもあります。空中を飛びながら冷え固まるので、風圧でラグビーボール形になったり、表面と内部の固まる速度の違いにより表面がパンの皮のようにひび割れたようになっているものなどがあり、火山弾といいます*14
 また、火口から飛来する岩石を指す用語の調査に基づき、危険性を住民に適切に伝える火山防災用語として、弾道運動により飛来する大きな噴石を火山弾としてはどうかという課題も挙げられています。*15

溶岩流

 マグマ噴火により流れ出た溶岩を溶岩流と呼びます。溶岩流の温度は1000℃前後と高温で、流れた先のあらゆるものを焼き尽くしながら流れ下ります。また、冷え固まった溶岩流は取り除くのが困難なため、壊滅的な被害となります*16

火砕流

 噴火による高温の火山砕屑物が空気と共に山肌を流れ下る現象で、そのスピードは時速100キロを超える事もあり、水面上を進むこともあります。噴火の形態によりその温度は約100℃~1000℃となり、場合によっては溶岩流よりも広範囲かつ高速に周囲を焼き尽くしながら壊滅的な被害を出すことがあります。過去の歴史の中には、都市が火砕流に飲み込まれ何万人もの犠牲者が出た事例もあります*17
 2014年御嶽山噴火では頂上付近とその南側斜面を小規模な火砕流が流れ下った事が確認されています。比較的低温(100℃程度)とされていますが、樹木は枯れてしまい、付近にいた人の髪の毛は茶色く変色したと言われています*18

火山ガス

 噴火していなくても火山ガスを噴出している火山はありますが、噴火をした時はその量が普段の何倍にもなります。火山によって様々な種類の成分がありますが、噴火による高濃度のガスは、その毒性や酸欠、高温などによって生命に重大な危害を加える事があります*19

火山灰

 火山砕屑物の中で直径2ミリ以下のものを火山灰といいます。主に尖ったガラス質成分でできていて、角膜を傷つけたり、肺に炎症を起こすことがあります。
 噴火の規模や風向きなどにより、数百キロ先まで広範囲に飛散し農作物への被害や日照不良、大規模な噴火では地球規模の異常気象を起こすこともあります。大量に降り積もった火山灰はその重みで家を押しつぶしてしまう事もあります。道路などに降り積もった火山灰は濡れると大変すべりやすくなり交通にも支障が出るばかりか、車や飛行機のエンジンに吸い込まれるとエンジンを壊してしまい重大な事故につながる可能性があります*20
 2014年御嶽山噴火による火山灰は、山梨県の北西部でも確認されたという調査結果があります*21

参考文献リンクなど

*11 高橋尚靖「火山砕屑物と火砕岩の分類について」

(https://www.jstage.jst.go.jp/article/chitoka/32/0/32_KJ00005483248/_pdf)

*12 気象庁:主な火山災害

(https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/kaisetsu/volsaigai/saigai.html)

*13 井奈波良一「噴火災害による人的被害の動向」

(http://www.jsomt.jp/journal/pdf/063060324.pdf)

*14 PHP研究所「火山の大研究」

*15 小山真人「火山に関する知識・情報の伝達と普及」

(http://sakuya.ed.shizuoka.ac.jp/koyama/public_html/etc/onlinepaper/K2005b.html#33)

*16 気象庁:防災メモ 溶岩流

(https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/monthly_v-act_doc/sapporo/02m11/100_02m11memo.pdf)

*17 荒牧茂雄「火砕流とその災害」

(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jgeography1889/95/7/95_7_489/_pdf)

*18 Oikawa et al 2016「Reconstruction of the 2014 eruption sequence of Ontake Volcano from recorded images and interviews」

(https://earth-planets-space.springeropen.com/articles/10.1186/s40623-016-0458-5)

*19 消防防災博物館:火山ガスとその危険性

(http://www.bousaihaku.com/cgi-bin/hp/index2.cgi?ac1=B103&ac3=5051&Page=hpd2_view)

*20 吉野正敏「火山噴出物が気象・気候を通じて人間整体に及ぼす影響」

(http://www.airies.or.jp/attach.php/6a6f75726e616c5f6368696b79756b616e6b796f5f524341316155636b/save/0/0/21_1-8.pdf)

*21 御嶽山降灰合同調査班「御嶽山2014年9月27日噴火による降灰分布」

(https://www.gsj.jp/hazards/volcano/kazan-bukai/yochiren/ontake_141023.pdf)