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王子の星(作中で小惑星B-612と推定されている)には、活火山が2つと死火山が1つあります。とても小さな火山で、王子は、活火山は朝ごはんを温めるために、死火山は腰かけがわりに使っていました。
活火山と訳されているのは、 volcan en activité(仏)<active volcano(英)>です。熱源として利用できていることから考えても、活火山と見て良いでしょう。王子は、この2つの活火山の煤(すす)はらいを7日に1回行うことで、噴火が起きないようにしています。小説中に記述はありませんが、きっと、過去に噴火を体験してひどい目にあったことがあるのでしょうね。。
一方、原文のvolcan éteint(仏)<extinct volcano(英)>は、一般には「死火山」と和訳されます(昔は消火山という訳もありました)。しかし、「休火山」と訳している本もあります。日本で最初に出版された内藤濯<ないとうあろう>による訳本、岩波書店の「星の王子さま」では、「休火山」と訳されています。ちなみに、休火山は、volcan endormi(仏)<dormant volcano(英)>で、かつては、休眠火山とも訳されることもありました。volcan éteintを休火山と訳すのは、意訳と考えられます。
小説の中で、王子は、死火山も煤はらいをしています。火が消えた(ようにみえる)火山も、もしかしたら噴火するかもしれないからと考えているからです。地理学者の星で、王子が「でも死火山と思っていたものが、また目をさますってこともあるでしょう」と言っていることから、王子は休火山であると疑っているようです。大人が見たら「帽子」にしか見えない絵を、「ゾウを呑んだ大蛇ボア」であることを一瞬で看破してしまう王子ですから、もしかしたら火山についても正しく見えているのかもしれませんね。ちなみに、かつては使われていた「休火山」という用語は、歴史時代に火山活動の記録が残っている火山のことですから、現在の定義では活火山に含まれることになります。
サン=テグジュペリ著(1943)・河野万里子訳(2006) 星の王子さま 新潮文庫
サン=テグジュペリ著(1943)・内藤 濯訳(1953) 星の王子さま 岩波書店
毎日仏文英訳和訳:原書で読む「星の王子様」 第9章 CHAPITRE IX アントワーヌ・ドゥ・サンテグジュベリ Le Petit Prince, par Antoine de Saint-Exupery
https://tomosu-lab.com/petitprince-c9/
フランス語原文「Le Petit Prince」
https://www.ebooksgratuits.com/pdf/st_exupery_le_petit_prince.pdf