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大地震は同じ断層で繰り返し発生します.次の地震で断層が再び「パリっと割れる」ためには,地震の際に破壊した断層は次の地震までに固着すると考えられます[Sibson, 1992など].野島断層での地震の再来周期は約2000年ですが,一度破壊した断層面はこの期間の間にゆっくりと再固着するのでしょうか? それとも意外と早く再固着するのでしょうか? この「固着過程」を調べることは,大地震までに断層がどんな準備過程を経ているのかを知ることに繋がるので,地震発生予測にとって大変重要な研究項目なのです.
そこで,野島断層ではS波偏向異方性の解析から断層の走向に平行な開口した微小クラックが検出できたわけですが,同じ解析を継続して行うことにより,S波偏向異方性がどう変化するかをモニタリングしました.
その結果,本震から33〜45ヵ月後の地震波形の解析では,断層の走向に平行な微小クラックは検出されず,震源断層上でも水平最大圧縮応力方向に並んだクラックが開口していることが分かりました.これは,本震直後に開口した微小クラックは本震から約3年後には既に閉じてしまったことを意味しています.すなわち,断層の再固着は数年という約2000年の再来周期を考えると著しく短い時間で完了してしまうことが現場観測から明らかになったのです.
本震から3年も経つと,主だった余震も収まり,またメカニズム解のP軸の向きも変化したことが報告されています[Yamada et al., 2001].こういった事柄も同時期に固着がほぼ終わってしまったことを意味していると考えられます.
具体的にどういうプロセスを経て早く固着してしまうのかはよく分かっていませんが,力学的効果だけではなく化学的な効果(カルサイトの沈積など)が関係しているのではないかと思っています(確証はない).
ご参考まで
Tadokoro, K., and M. Ando, Geophys. Res. Lett., 29, doi:10.1029/2001GL013644, 2002.
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