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地震発生予測の研究を行うには,地震そのもの(発生のしくみなど)を知ることに加えて,地震発生の場である断層の性質も詳細に把握しなければなりません.
断層というと2つの近くブロックの境目になっている1枚の面(断層面)を思い浮かべるかも知れませんが,地震のたびに繰り返し破壊してきた断層面は,岩石が細かく砕かれて断層破砕帯を生成しています.この断層破砕帯の,特に深部の構造を地震学的に(地震波を使って)解明しようというのがこの研究です.
開口した微小クラック(割れ目)が並んで分布する媒質内をS波が伝わると,クラックが並んでいる方向に震動する「速いS波」と,その直交方向に震動する「遅いS波」に分かれる性質があります.つまり,地震波形記録に2つのS波が現れるのです.これをS波偏向異方性といいます.このS波偏向異方性の解析を行うと,どっちの方向にどの程度のクラックが並んでいるかが分かるわけです.この解析を断層破砕帯を通ってきた地震波に対して行うことで,破砕帯内(やや周辺の岩盤であるダメージゾーンも含む;Chester et al., 1993など)のクラック分布,すなわち構造を知ることができるのです.
![]() 野島断層でのS波偏向異方性解析結果[Tadokoro et al., 1999] 兵庫県南部地震発生から2ヵ月後までの余震波形を使って解析した結果です.速いS波の振動方向をローズダイヤグラムで示しています. 本震発生直後は,断層上でのみ断層の走向とほぼ平行な方向に振動する速いS波が観測されました.これは,本震の震源断層の破砕帯中に,断層の走向と平行な開口した微小クラックが並んで分布していることを示しています. 震源断層と関係ない場所では,主として水平最大圧縮応力方向に並んだクラックが分布している様子が分かります. この解析は2000年の鳥取県西部地震の震源断層上でも行いました. |
![]() ![]() 1999年トルコ・コジャエリ地震の震源断層(北アナトリア断層)上での解析結果[Tadokoro et al., 2002] こちらも同様に,震源断層上のKZA1では断層の走向とほぼ平行な方向に振動する速いS波が観測されました. |
ご参考まで
Tadokoro, K., et al., J. Geophys. Res., 104, 981-992, 1999.
Tadokoro, K., et al., Bull. Earthq. J. Seismology, 6, 411-417, 2002.
Tadokoro, K., et al., Bull. Earthq. Res. Inst. Univ. Tokyo, 78, 67-74, 2003.
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