長期予知にも、まだ問題はたくさんあった。
 本書では,「長期予知は現在でもできている」という見出しで長期予知の説明をしています。この見出しについては,内部でも議論がありました。本当にできているのかとか,まだ十分なレベルに達していないのではないかなどでした。それでも、政府の地震調査推進本部から主要な地震に関する長期評価がなされ、それをもとに「全国を概観した強振動予測図」が発表されているので、まがりなりにも実施されているのは事実ですから,この様な表現をしました。
 しかし、本書がほぼ出来上がってからも、能登半島地震、新潟県中越沖地震、岩手・宮城内陸地震など、想定されていなかった場所での地震が相次いでいます。能登半島沖地震や新潟県中越沖地震は、沿岸海域の活断層に関係して発生した地震です。また岩手・宮城内陸地震については、地表には殆ど現れていなかった活断層ではっせいしたものです。ともに、長期評価では考慮していなかったものです。
 沿岸海域の活断層は、費用がかかるために網羅的な調査はなされていません。原子力発電所建設のための調査は、莫大な費用をかけて実施されてはいますが,日本の沿岸域を覆うにははなはだ不十分です。地表にほとんど痕跡の現れなていない活断層についても、まだ調査法は確立していないのが現状です。
 いずれにせよ、世の中に出していく際に、「わからないもの」や「調査が不十分なもの」をどのように扱っていくかが問われているのです。