「薬を与えたから治った」だけではその薬は許可されない。
 「前兆現象」と地震発生との関係が主張されるときによくあることは、「地震が発生する前には、この現象が起きています」というようなものです。そのメカニズムについても説明されることも多いのですが,ほとんどの場合は定性的な説明にすぎません。また現象と地震発生との因果関係についても曖昧です。その曖昧さを例えたのが表題です。
 薬を開発したときには、薬の効果を試験するために実際に患者さんに与えて治るかどうかを確かめます。その場合にはプラセボと呼ばれ、効果のない偽薬を与えたグループと試験用の薬を与えたグループで効果を比較します。薬は、投与しても投与しなくても治る可能性があります.たまたま治ったのか、薬で治ったのかを比較する必要があります.薬の効果を明らかにするためには以下の4つの場合について整理する必要があります.(A)薬を投与して治った,(B)薬を投与しても治らなかった,(C)薬を投与しなくても治った、(D)薬を投与せず治らなかった.この場合の(A)と(D)の割合が寿分に大きければ薬が効いたと判断します。
 最近話題になった、タミフルと異常行動の問題は、上記の(A)「タミフルを飲んで異常行動を起こした」場合だけがクローズアップされたものです。これは「変な雲が出たら地震が起きた」ということだけをクローズアップしたことと同じです。メディアにも冷静な判断が必要だと思います。