予知は、まず分類してから議論しよう。
「地震予知は可能か・不可能か?」という問いかけがよくあります。これはわかりやすいのですが,過去いくどもこのテーマで議論が繰り返され、その度に不毛な結果に終わっています。その理由は、いろいろあると思いますが,たいていの場合には地震予知のどのあたりの議論をしているかがはっきりしていないからだと思われます。長期予知と直前予知をごちゃごちゃにしたり,マグニチュードの大小を区別しないなど,時間と空間スケールに混乱があるように思います.
 本書では,いつ・どこで・どのくらいという、いわゆる「地震予知の三要素」と、長期・中期・直前という「いつ」の予測に関する区分をはっきりさせた記述をしています。その上で、地震予知について,現在どの部分ができていて,どの部分ができていないか、また研究開発上の問題点はどこにあり,現在の研究発達段階はどのレベルにあるかという評価をしています.このように、きちんと分類をして議論をすることは,専門家間の議論においても、国民に対する説明責任を果たすためにもきわめて重要です。

 ただ,本書で明示的に分類できていない点は、プレート境界の地震と内陸活断層で発生する地震との区別です。記述そのものがプレート境界の地震に寄っていて,内陸の地震には十分な記述がありません.それは内陸の地震に関する理解が,プレート境界地震に関する理解に比べて、まだまだ遅れていることが一因です。