ACROSSのアレイ観測と解析

Array Experiment and Analysis of ACROSS

池田典宏(1) 山岡耕春(1) 国友孝洋(2) 平井誠(2)  小川克郎(1) 宮川幸治(1) 小林和典(1) 熊澤峰夫(2)
(1)名大理 (2)動燃

アクロスは周波数領域でデータを得て、地下構造とその時間変化を捉えるための新 しい手法である。その際には波の相の同定が必要となる.今回、アクロスの信号を地 震計アレイで観測する実験を行った.その結果,アレイによって直達波や反射波、表 面波を容易に区別できることがわかった.

97年3月に鹿児島県山川町で、9月に岐阜県瑞浪市で実験を行った。山川では発生 力最大2x104Nの可搬地表設置型震源を用いた。地震計は固有周期4.5Hzの3成分速度 型地震計を用い、震源から約100mのところに4m間隔に直線状に10台配置した。得ら れたデータは、30〜90Hzの間を0.4Hz間隔に150成分で、S/N比は約40dBである。観測 はのべ1800分行った.瑞浪では2.4km離れた土岐の動燃東濃地科学センターにある最 大発生力2x105Nの回転型アクロスを使用した。地震計は山川と同じもので8m間隔に L字型に13台配置した。信号はFM制御によって17.5〜22.5Hzの間を0.1Hz間隔に51点 得た。S/N比は約25dBである。観測は7080分かけた.ともに多チャンネルTSスタッ カーで記録した。

アレイの解析は、周波数領域で見かけ速度に合わせて位相をずらし、時間領域に戻 して足し合わせるビームフォーミングを行った。この方法によって波の到来方向と見 かけ速度が分かる。ただ足し合わせるだけでは、走時の遅い部分のエネルギーが小さ くなって見にくくなるため、それぞれの時刻の波のエネルギーの和の平方根でわり算 をして振幅の小さい部分でも相関の良い波を取り出す工夫をした。 これはいわゆるセンブランス法に似た方法になる。従来は時間波形に対して行われて きたものだが、アクロスでは周波数領域のデータが得られるので、周波数領域で効率 的に計算できるようにした。これにより、走時と、波の速度、到来方向が一目でわか るようになった。このように得られた結果と従来の方法で得られた結果から、P波、 S波の同定を試みた。

山川では P波、S波の直達波のほか、深さ250mからと考えられるのPとSの反射 波を同定することができた。一方、瑞浪では、P波、S波、深さ6kmからの反射波を みることができ、到来方向はほぼ震源方向と一致した。