ACROSSと地盤とのカップリング変動の補正

山岡耕春・小林和典・宮川幸治(名大・理)

Correction of the temporal variation of source-ground coupling of ACROSS

K. Yamaoka, K. Kobayashi and K. Miyakawa (Nagoya Univ.)

 我々は淡路島野島断層近傍に設置したACROSS震源装置と800mと1800mのボアホール地 震計を用いて、兵庫県南部地震の後の断層近傍での地震波速度変化の検出を試みてい る。前回の学会発表(宮川ほか、1998年合同大会)ではボアホール地震計で計測され た日周変動は、受信側が原因ではなく震源装置側に原因がある可能性が強いことが報 告された。その後の実験(小林ほか,本大会)によって、震源装置を固定しているコ ンクリートの基礎に設置した地震計でも同様な日周変動が見いだされ、震源側の変動 であることが確認された。
 ここでは震源の時間変動を補正する方法を提案し、その結果を示す。考え方は地震 計によってモニターされたコンクリート基礎の震動を入力として、受信側地震計の変 動を出力とする伝達関数を求めることである。ある周波数におけるコンクリート基礎 の振動をX、受信された信号をY、伝達関数をGとし、それぞれ時間変動しない部分 と時間変動する部分に分けて関係を示すと:
     Y0 + Y(t) = (G0 + G(t))(X0 + X(t))
時間変動の項は微少であると仮定して変形すると、
     Y0 + Y(t) = G0 (X0 + X(t)) + G(t)X0
上式に従い,コンクリート基礎の振動X0 + X(t)と地震計による受信された振動 Y0 + Y(t)から最小二乗法によってG0を得る。最終的に必要とするのはX(t)の影響を取り除 いた (G0 + G(t))X0 = G0 X0 + G(t)X0 である。G0 X0 = Y0 = 、最 小二乗計算の残差をG(t)X0とみなすと、震源のコンクリート基礎の時間変動を除去し た時間変動を得ることができる。図には800mボアホール地震計で記録したACROSS震源 装置の信号の18.00Hzでの変動と、振動装置のコンクリート基礎によって補正した変 動を示す。その結果時間精度として振幅で1%、位相で0.01ラジアンを達成した。

図1:800mボアホール地震計で受信したACROSS信号(18.00Hz,補正前).上は振幅( 1目盛は1x10^-8m/s,下は位相(1目盛が0.1ラジアン,横軸は1目盛が1日)

図2:振動装置の基礎コンクリートの振動変化で補正した後 (空白は基礎変動の欠測期間)