第12回:

 本日は、まず前回の宿題だった旧作「日本沈没」をみた感想を提出してもらった。提出してくれたのは6名であったがそれぞれに感想を上手く述べている。予想外であったのは、全員が2006年版のほうに好印象を受けていたことである。ポイントはいくつかある。やはり真っ先にエンディングの違いであった。旧作は未来に希望のないエンディングになっていたのであるが、新作は未来に希望がもてるものであった。小野寺の役割にしても、新作がその使命を見出していくのにたいし、旧作では小野寺の描写が十分でなかったなどである。
 旧作の時代背景についても考察をした。旧作が作られた1973年は、高度経済成長のひずみがあちこちに見え始めた時代で、学園紛争、公害問題、オイルショック、ベトナム戦争末期であるなど、数々の社会問題を抱えていた。一方、地震災害という面では、終戦間際の多くの地震(1943鳥取地震、1944東南海地震、1945三河地震、1946南海地震、1948福井地震)が戦争とともに忘れ去られ、地震災害と言えば関東大震災という時代だった。これが旧作における災害描写に現れてる。新作の時代には、すでに1995阪神淡路の震災や、2004のスマトラ沖巨大地震津波など、災害が映像として国民の目の当たりになっている。そのため新作の災害描写は象徴的・内面的になっている。
 前回、旧作を見せたときには、その反応が芳しくなかったので、旧作を見せたのは失敗だったと思ったのだが、レポートを見る限りは旧作を見せて良かったと思う。学生はちゃんと違いを感じ取っているようだ。