NGY地震学ノート No.38

Apr. 11, 2011
名古屋大学地震火山・防災研究センター

◆遠地実体波解析(暫定解)◆ --------------------------------------
4月11日福島浜通りの地震(M7.0)
----------------------------------------------------------------

● 概略・特徴: 4月11日17時16分頃(JST),福島県浜通りでM7.0の地震が起こりました.
USGSによる速報震源は次の通りです.

    発生時刻         震央          深さ      M
 11/04/11 08:16:13  (UT)  37.007°N   140.477°E    10 km    6.6

●データ処理: IRIS-DMCから収集した広帯域地震計記録(P波上下動53, S波6) を用いて 解析しました.
●結果: 結果を図1に示します。どちらの断層面かは はっきりしませんが,多少残差のよくなった解を示します. 震源パラメータは次のとおりです.

 走向、傾斜、すべり角 =  (105,44,-84) 
 地震モーメント  Mo  =  7.03 x10**18 Nm  (Mw = 6.5)
  破壊継続時間(主破壊) T  =  10 s
 深さ          H =  6 km
 最大滑り量       Dmax =  1.5 m

●解釈その他:正断層の地震です。下図は黄色の●は気象庁による3月11日のM9の 地震の余震分布、黒いメカニズムはF-netによる余震のメカニズム解です。このところ 福島、茨城付近で浅い正断層の地震が起きていました(赤いコンターの右上と左下の かたまり)が、これらの活動の間で起こっているようです。断層面はどちらかわかりません. 解析ではうまく分離できていませんが、波形をみると2発のイベントがあることがわかります。 東側の観測点では似通った波形が2つ見えますが、西側では2発目が見えにくくなっていること から2つのメカニズムが多少違うのだろうと思います。USGSのCMT解やGlobal CMT解をみると non double couple成分がかなり大きいのもこのせいかもしれません。
この地震が起きたとき、たまたま新宿の百貨店の10階にある本屋にいました。ゆっくりの 揺れを感じ、大きな地震がきたことがわかりました。店員の方は客に対して的確な指示を 出していられたため、みな落ち着いた行動を取っていました。今日は私のいた場所では 携帯電話の緊急地震速報のブザーは鳴りませんでしたが、もう少し震源に近ければ一斉に 人々のブザーがなります。緊急地震情報が発せられるようになった今、国民一人一人が 判断し慌てずに行動を取ることが求められています。

すべり分布

赤いコンターが今回の地震.は気象庁による3/11以降の 震央。メカニズム解はF-netによる。

(文責:山中)