NGY地震学ノート No.3

Aug. 16, 2007
名古屋大学地震火山・防災研究センター

◆遠地実体波解析(暫定解)◆ --------------------------------------
8月15日ペルーの地震(M7.9)
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● 概略・特徴: 8月15日23時40分(UT),ペルー中部の沿岸で M7.9の地震が発生しました. 330人近くの死亡が確認,少なくとも800名がけがをしたということです.イカ州では教会が 崩壊、そのほか家屋の崩壊も見られるようです.小規模でしたが、津波も観測されています.
USGSによる速報震源は次の通りです.

    発生時刻           震央     深さ      M
 07/08/15 23:40  (UT)    13.358°S   76.522°W    30.2km    7.9

●データ処理: IRIS-DMCから収集した広帯域地震計記録(P波上下動37,SH波5) を用いて解析しました.
●結果: 結果をに示します。主な震源パラメータは次のとおりです.

 走向、傾斜、すべり角 =  (318,24,48) 
 地震モーメント  Mo  =  1.48 x10**21 Nm  (Mw = 8.1)
  破壊継続時間(主破壊) T  = 90 s
 深さ          H = 50 km
 最大すべり量      Dmax = 7.0m

●解釈その他:
ナスカプレートが南米プレートに沈み込むプレート境界の地震です.今回の地震のすぐ南側では 1996年11月12日にMw7.7の地震(EIC地震学ノート), 2001年6月23日にMw8.2の地震(EIC地震学ノート No.105) が,北側では 1974年10月3日にM7.6の地震が,さらに北側では1966年10月17日にM8.0の地震が起きています.
今回の地震はまず破壊開始点(震源)付近ですべった後,震源から140kmほど南東に行ったところの浅い領域で大きなすべりが見られました.観測された波形を見ても50-60秒後に大変大きな振幅が見られます.この大きなアスペリティによってイカ州で多大な被害がでているのだろうと思います.このように破壊開始点からやや離れたところで大きなすべりが起きるというすべりのパターンは今回の地震の南側で起こった2001年の地震ととてもよく似ています.
津波が小さかったのは震源が深めで,大きなすべりを起こした領域が海底よりかなり深いところにあったためだと思われます.
(文責:山中)


追加     (08.03.09)

 今回の地震では50-60秒後に大きなすべりがあり,これを説明するために上記解析では破壊伝播速度を多少遅くして解析をしました.上記解析で用いた最大破壊伝播速度は2.5km/sで,日頃の解析よりは多少遅い速度を仮定しています.これは2つのサブイベントが一連のものだという前提で考えた場合の解析方法です.
 一方,2つめのイベントは一連のものではなく,1つめのイベントが起きたことによって,隣のアスペリティが遅れてすべったという考えもあります.そこで破壊伝播速度は標準的な 3.0km/sとして各グリッドでのtime windowを長く取って解析してみました.つまり遅れて破壊が始まった場合を考慮したやり方です.
 その結果がこちらです.この方法でも波形はよく説明できます.これによって求められたすべり分布は下図の通りです.2つめのイベントは上記の方法で求めたものよりも破壊開始点に近い所に求まりました.2つめのイベントは1つめによって誘発され遅れて破壊したと考えたこちらの結果の方が余震の広がりとよく一致します.