2009年度年次報告会

名古屋大学環境学研究科レクチャーホール(環境総合館1階)
2010年3月23日(火) 10:00開始
プログラム(PDF146KB), 要旨(PDF341KB)


 2010年3月23日に環境学研究科レクチャーホールにおいて「2009年度名古屋大学大学院環境学研究科 地震火山・防災研究センター年次報告会」を開催しました。センター長山岡耕春教授の挨拶(ハイライト)から始まり、センター教員・研究員・技術職員17名の研究発表が行われ、レクチャーホール前ロビーでは、教員・学生によるポスター6題を掲載してポスターセッションが行われました。その後、今年度で退職される山崎文人助教の講演を最後に閉会しました。
 年次報告会への参加人数は50名。発表内容は最新の研究成果、今後の課題、および新たに興味のある研究分野など多岐にわたり、質疑応答は活発で持ち時間内に終わらない場面も多く見られました。また、山崎文人助教の退職記念講演「御嶽山における地震火山活動」では、2010年2月3-4日御嶽山南東麓を中心に、深さ20-40kmの深さでバースト的な地震活動が発生したという最新の観測結果が公表されました。




山崎文人助教の退職記念講演
「御嶽山における地震火山活動」

懇親会で挨拶される
山崎助教

ポスターセッションの様子




「御嶽山における地震火山活動」(講演要旨)
○山崎文人


はじめに
 1976年の春に御岳山南麓に始まった群発地震活動は、その後の1979年10月の噴火、1984年9月の長野県西部地震(M6.8)をはじめとした一連の地殻活動を経て34年後の今日なお衰えることなく継続し、その活動域は御嶽山山頂を取り巻くように東から北の領域にまで拡大している。これら一連の活動の消長は御嶽山下のマントル最上部を供給源とする流体の上昇によってもたらされているであろうと推測されてはいるが、その全体像ならびに諸活動の相互連関は必ずしも解明されているわけではない。言い換えれば、社会的関心事である「御嶽山の本格的な噴火はあるのか」、「長野県西部地震と同様な大地震は再来するか」という2つの問いに対しての答えはまだ見出し得ていないということでもある。 
 今回は、最近認められた御嶽山とその周辺域における地震活動の変化について報告するとともに、この34年間の一連の地震・火山活動とその消長ならびにそれらの活動の特徴について概観してみたい。

群発地震域東縁端での地震活動の活発化
 2009年10月6日に群発地震域東縁端において地震活動が顕著に活発化し、その後東縁端に沿って活動域を南南東に広げ、活動はほぼ1ヶ月継続した。この間、西側の群発地震活動域での地震活動は低下した。その後も今日まで群発地震域の東側での活動が目立ち、NW-SEないしNNW-SSE方向に分布する活動も認められる。この群発地震域東縁端に沿った今回の地震活動は何らかの構造境界の存在を示唆しているが、長野県西部地震が構造境界に沿って発生したことを考えると、今回の活動についても構造境界の評価が重要と思われる。

モホ面付近でのバースト的地震活動
 2010年2月3-4日、御嶽山南東麓を中心に、深さ20-40kmの深さでバースト的な地震活動が発生した。これと同様な活動は2002年8月にも発生している。2002年の活動ではその後、マントル内の低周波地震の活動度が高まり、御嶽山地下深部での地殻活動度の活発化が示唆されたが、今回のモホ面付近のバースト的な地震活動が同様な地下深部での地殻活動活発化の始まりとなるのか、また、それと火山活動、地殻浅部での地震活動との関連がどうなるか注視したい。
 これらの最近の活動は、2007年から5ヵ年計画でスタートした集中観測で展開した5点の臨時観測点の分布域直下で発生しており、御嶽山周辺に従来から展開されている観測点とあわせ、検知力、精度ともに良質のデータとして観測されている。今回の地震活動については、約450個の震源が求まったが、JMA一元化処理では33個の検知数であった。また、決定された震源の深さには約2kmの系統的なずれが存在している。



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