NGY地震学ノート No.8a

May 14, 2008
名古屋大学地震火山・防災研究センター

◆遠地実体波解析(暫定解)◆ --------------------------------------
5月12日中国 四川省の地震(M7.5)Ver.2
----------------------------------------------------------------

● 前回からの変更点: 
5月12日6時28分(UT),中国四川省でM7.5の発生した地震 の被害が広がっています.すでに死者が1万人を超えてしまいました.
余震ですが,本震直後の分布(NGY8.htmlの図の) でも数は少ないですが本震から北東方向に200km程度まで広がっていました. が,この2日間の余震分布をみるとやはり断層は200km程度あったと考えられます.
速報解として解析したときも断層長200kmを考慮してみましたが,

から100km程度の断層を仮定した結果を速報解としました. ここでは余震分布も考慮して長めの断層の結果を載せます.

●結果: 結果をに示します。主な震源パラメータは次のとおりです.

 走向、傾斜、すべり角 =  (230,30,128) 
 地震モーメント  Mo  =  6.8 x10**20 Nm  (Mw = 7.8)
  破壊継続時間(主破壊) T  =  110s
 深さ          H =  11 km
 断層面積        260km x 50km
 最大すべり量(主要部)  Dmax = 6.7 m

●解釈その他:
すべり分布は大きく分けて2つに分かれます.便宜上ここでは北側と南側と呼ぶことにします. 南側は速報解と同じです.南側のすべりの終端あたりに余震が多く起こっているように 見えます.多くの場合,余震はアスペリティ(地震時に大きくすべった領域)の周りで 起こるという特徴がありますが,この地震活動はそのように考えることができると 思います.
一方北側は南側に比べてすべり量は大変小さく最大でも1mちょっとです.またすべりの方向 も横ずれです.globalCMT解を見るとnon-double couple成分が大きくなっていますが,これは 北側と南側で違ったすべりをしているためかもしれません.
産総研のHPに載っている 震央周辺地域の地質構造をみると,この竜門山断層は南側では明瞭な活断層ですが 北側は現在の活動状況が不明な第四紀断層となっています.
今後もう少し解析を進めてみたいと思います.

すべり分布(コンターは0.5m間隔で1m以上すべったところ).破壊開始点は. はUSGSによる余震分布.