防災人形劇 「こぶたくんとおおかみくん いえをたてる」
     脚本   幸田眞希(聖徳大学短期大学部保育科教授)
     共同制作 東京大学地震研究所
     監修   山岡耕春(名古屋大学環境学研究科地震火山・防災研究センター教授)
     協力   損保ジャパンちきゅうくらぶ
脚本を使用した上演は自由ですが、脚本の著作権は幸田眞希教授にあります。

*これは、2007年6月に横浜人形の家「あかいくつ劇場」で初演を迎えた作品を、耐震問題の場面を中心に簡略にし、一般化したものです。人形劇の名作である「なかよし」などを参考に、かくれんぼやおにごっこなど、具体的な子どもの遊びの姿の場面を冒頭に加えて構成してみてください。また、ペープサートなど平面的な人形で上演することもよいのではないでしょうか。(幸田眞希)

  舞台は森の広場 とくに装置などはない。
  M1 オープニングの曲とともに開幕
  おおかみ下手から登場


おおかみ 「ちょちょいのちょい、ちょちょいのちょい。
      おや、こぶたくんはまだきていないようだな。
      よしちょいとかくれていよう」

   こぶた上手から登場

こぶた  「なにかおもしろいことはないかなー。
      こんなときおおかみくんがいたらなー」


   おおかみ下手から登場。

おかみ  「やあ、こぶたくん」
こぶた  
「あっ! おおかみくん。ひとりだとおもしろくないんだよ」
おおかみ
 「うん、ひとりだとつまらないね」
こぶた  「なにかしてあそぼうよ」
おおかみ 「なにしてあそぶ?」
こぶた  「うーん、なにしようか」
おおかみ 「うーん、なにしようか」
こぶた  「あっ、たいへんだ。
      ぼく、おかあさんにいえをたてるようにいわれたんだ。」
おおかみ 「そういえば、ぼくもおかあさんにいわれたよ。
      じぶんのいえをたてなさいって。
      もう。おおきくなったからだって」
こぶた  「ぼくもおんなじだ」
おおかみ 「まー、いえをたてるなんてかんたんさ。
      ちょっと、はしらをたてれば、
      ちょいちょいのちょいさ」
こぶた  「でも、ちゃんとたてないと!
      じしんがきたらどうするの?」
おおかみ 「そんなこと、きにしてるのか?」
こぶた  「そうだよちゃんとたてないと」
おおかみ 「だいじょうぶ、だいじょうぶ
      ちょいちょいのちょいっと、
      たててくるから」

   おおかみ、下手に退場。

こぶた  「だいじょうぶかなー? おおかみくん」
こぶた  「ぼくはどうしようかなー。
      そうだ! ものしりのふくろうおじさんにきいてみよう。」

   こぶた、上手に退場。

   ふくろう、下手から登場。

ふくろう 「きょうも、いいてんきじゃなー
      おや、こぶたくんがやってくるぞ」

   こぶた上手から登場

こぶた  「ふくろうおじさんこんにちは、
      いいおてんきですね」
ふくろう 「ああ、いいてんきじゃ。
      ところで、なにか、わしにようかな」
こぶた  「ええ、ぼく、いえをたてるんです。
      なにか、きをつけることがありますか」

   ふくろう、地面に絵を描くように。

ふくろう 「そうじゃなー。こういうふうにはしらをたてて、
      じしんがきてもだいじょうぶなように、
      ここのところに、すじかいというのをつかってな、
      はしらとはしらのあいだに、きでばつをつくるんじゃ。
      ばってん! これがだいじなんじゃ。
      わかったかな」
こぶた  「はいわかりました。
      はしらとはしらのあいだに、きでばつをつくる。
      ばってんですね。
      じしんに、つよいいえをたてます」
ふくろう 「しっかりしたいえをたてるんじゃよ」
こぶた  「はいわかりました」
ふくろう 「それから、たてるばしょも、だいじなんじゃよ。
      そうじゃなぁ。
      もぐらさんのはなしも、きいてみるんじゃな」
こぶた  「ありがとうございました」
ふくろう 「じゃ、げんきでな。こぶたくん」
こぶた  「はーい」

   ふくろう下手に退場。

   モグラ中央奥から登場。

もぐら  「やあこぶたくん、ぼくのことがはなしにでてなかったかい」
こぶた  「やあ、もぐらさん。こんにちは。
      ぼく、いえをたてるんです。
      ふくろうおじさんがはなしてくれたんですが、
      どこにたてたらいいか、
      もぐらさんのはなしをきくようにいわれたんです」
もぐら  「なーんだそんなことか。それはきまっているさ。
      じしんでもだいじょうぶな、
      しっかりしたいえをたてるばしょは、
      かたいじめんのところをえらぶことだ。」
こぶた  「かたいじめんのところですね」
もぐら  「ああ、むこうのおかのちかくは、
      かたくていいところだよ」
こぶた  「じゃあ、あのおかのちかくにいえをたてます。
      もぐらさんありがとう」
もぐら  「ああ、しっかりな。
      そういえば、
      かわのそばのやわらかいじめんのところに、
      おおかみくんもいえをたてていたがー。
      あそこはだめだといったんだがー」
こぶた  「おおかみくんだいじょうぶかなー。
      あ、もぐらさんありがとう」
もぐら  「ああ、がんばって、しっかりしたいえをたてるんだよ」
こぶた  「はいじしんにもつよい、しっかりしたいえをたてますよ」
もぐら  「いえができたころみにいくよ」
こぶた  「ぜひきてください。もぐらさんさようなら」
もぐら  「はい、さようなら」

もぐら、下手に退場

こぶた  「さあ、いえをたてよう」

   こぶた上手に退場。

   おおかみ舞台中央に奥から登場。いえをたてている。

   家がだんだんにしたからせりあがってくる。

おおかみ 「いえをたてるのなんかかんたんさ、
      ここのじめんはやわらかいし、
      かんたんにはしらもたつし、
      ちょいちょいのちょいだ。
      さあ、できた!」

   
おおかみの家が全部出る

おおかみ 「うん、なかなかりっぱないえだぞ。
      よしよし。ちょいちょいのちょいだ」

   おおかみ、家の裏に入る。

   おおかみの家が、奥に下がる

   こぶた上手から登場。家を建てる。

   こぶたの家(おもて面)が下からせりあがってくる。

こぶた  「ここのじめんは、もぐらさんのいうとおり、
      かたくてしっかりしているぞ。
      いえをたてるのはたいへんだけど、
      ふくろうおじさんのいうとおり、つよくつくろう
      よいしょ、よいしょ。
      すじかいをいれて、ばってんをしっかりつくってと」

   子豚の家が全部出る。

 
  裏面になり完成。

こぶた  「さ、やっとできた。
      しっかりした、
      つよいいえができたぞ。
      うれしいな」

   こぶた家の裏に入る。

   こぶたの家が奥に下がる

   M2 地震の効果音

   おおかみの家がゆれながらせりあがる。

(声のみ)

おおかみ 「たすけてくれー。つぶされるよー
      わーっ!」

   おおかみの家が裏面になり、つぶれた家に変わる。

おおかみ 「たすけてくれー。
      でられないよー。」

   こぶた上手から走って登場。

こぶた  「おおかみくーん、だいじょうぶかい。
      しんぱいになってきたんだよー」
おおかみ 「ああ。こぶたくん、
      でられないんだよー。
      たすけてくれー」
こぶた  「よし! ひっぱるぞ。
      よいしょ、よいしょ。
      よいしょ、よいしょ。」

   
おおかみ家の裏から引き出される。

こぶた  「だいじょうぶかい?」
おおかみ 「ああ、たすかった。
      こぶたくんどうもありがとう」
こぶた  「それより、だいじょうぶかい?
      けがはないかい?」
おおかみ 「うん、だいじょうぶみたいだ。
      どこもいたくないよ」
こぶた  「ぼくのいえはだいじょうぶだったよ。
      じしんでも、びくともしなかったんだよ。
      ふくろうおじさんや、もぐらさんにはなしをきいて、
      しっかりたてたんだ。
      こんどは、ちゃんとしたいえをつくろうね」
おおかみ 「うん、ふくろうおじさんや、
      もぐらさんのはなしをきいて、
      じしんがきてもだいじょうぶな、
      つよくて、しっかりしたいえをたてるよ」
こぶた  「ぼくもてつだうからね」
おおかみ 「ああ、ありがとう」
こぶた  「じゃ、ぼくのいえでひとやすみしよう
      さあ、いこう」

   M3 エンディングの曲 
   こぶたとおおかみ上手へ歩きながら

おおかみ 「うん、ありがとう」
こぶた  「だいじょうぶかい」
おおかみ 「うん、だいじょうぶだよ」

  ――幕――