人口減少社会の設計 松谷明彦・藤正巌著 760円 211ページ 2002年6月
 日本の人口は数年後にピークを迎え、その後減少に転ずる。これは戦後日本が初めて経験する事態で、従来のように設備投資と需要が繰り返して成長していく経済はもはやあり得ない。人口が減ったら外国人を労働者として迎えればよいと言うような短絡的な経済学ではなく、豊かな生活とは何か?という問いから始まりどのような制作が必要かを説いている。マクロ経済学者と物理学者の共著という異色の取り合わせによる説得力のある主張が展開されている。一読の価値あり。(May 19, 2005)

ウェブ進化論 ー本当の大きな変化はこれから始まるー 梅田望夫 ちくま書房  249ページ 740円 2006年2月
 3月ですでに6刷ということで、反響の大きさを想像できる。インターネット世界で起こりつつある変化を、産業革命に匹敵する大変革ととらえ、平易に解説する。変革の最先鋒がgoogleであるとして、googleがしてきたこと、なそうとすることを通し、変革の重大さを訴えている。空間距離を超えて個と個が結びつくこと、誰でも情報源になれること、それらを関係づける手法を通し、今までの世界(筆者はリアルワールドといっている)とは全く違ったネットの中での秩序ができあがりつつある。目からうろこが落ちているのがわかる。(April 1, 2006)

日本沈没(上)(下) 小松左京著 光文社文庫 619円x2 1995年4月
 ひさしぶりに読み返してみた。さすがに地球物理学的や科学技術の記述は今となっては古くなってしまったが、災害や社会の記述は現代にもそのまま当てはまるのが驚きで、改めて小松左京のすごさを認識した。。「災害文化」という言葉もすでに使われていた。阪神淡路大震災のあとに文庫本として復活したものであるが、初版は1973年で「東海地震説」の前であった。今でも輝きを失わない名作である。(Feb. 20, 2005)

頭がいい人の45歳からの習慣術 小泉十三著 KAWADE夢新書  213ページ 720円 2004年9月
 自分の年齢を考えて、つい買ってしまった。それなりに考えさせられる。この手の書名の付け方は良いかもしれない。「45歳からの地震防災」なんて。(April.24,2005)

記憶力を強くする 池谷裕二著 講談社ブルーバックス 269ページ 980円 2001年1月
 1970年生まれの若い神経科学の研究者である著者がわかりやすく書いた記憶に関する話。記憶の仕組みを神経科学の最新の知見に基づいてわかりやすく解説している.我々の精神活動も、脳神経の物理化学現象であることが示されているが、その仕組みの巧みさに驚嘆してしまう。複雑にネットワークを作った脳神経にはまだまだ奥深い秘密がありそうだ。地震を予知する動物だってありそうに思えてしまう。(April 18, 2004)

公認「地震予知を疑う」 島村英紀著 柏書房 238ページ 1400円 2004年2月
 フィクションとして読むのならば面白い本。事実を知ることや何かに役立てることを期待して読む場合には注意が必要。この本についていろいろな分野の人に聞くと、それぞれの人がよく知っている部分について、本書が大きな間違いをしていることを指摘する。特に気象庁藤枝の体積ひずみ計が異常を示した事件についての記述は致命的に間違っている。事実関係に関する確認を十分に行わないで書いたものである可能性が高い。これだけ間違いがあると著者の主張にも説得力を欠いてしまう。(March 29, 2004)

死都日本 石黒輝著 講談社 520ページ 2300円 2002年9月
 日本沈没以来、ひざびさの日本列島を舞台とした地球科学SF小説。九州で1万年に1回の割合で起きる巨大噴火が今起きた場合を想定した本格的な小説。霧島火山で発生した珪長質巨大噴火によってカルデラができ、九州に南半分が火砕流に襲われ鹿児島・宮崎の都市が壊滅。火山灰は日本全体を覆い尽くそうとしている。これは大災害というだけでなく、日本経済の崩壊を意味するが、事前に巨大噴火の可能性を察知した日本政府はK作戦本部を立ち上げ、地球スケールで対策を取り、日本の政治経済の沈没を防いだという痛快な結末。日本沈没は金輪際起きないが、この様な噴火は起きる可能性がある。長編だが二晩夜なべをして読んでしまった。(Sep.11, 2003)

すべてがFになる 森博嗣著 講談社 369ページ 880円 1996年4月
 国立N大学工学部建築学科(現:環境学研究科都市環境学専攻)助教授による処女作。建築学科の犀川先生と教え子の学生の西之園萌絵がミステリアスな殺人事件の解決に挑む。すべてがFになると繰り上がるんだ、とわかる人はコンピュータの得意なベテラン。最近の学生はこの様なコンピュータの細かいところを知らなくても何とかなるんだ。非常に良くできたミステリーで、さすが処女作だけあってよくかけている。森博嗣先生の小説で2時間ドラマを作ったら名古屋大学と名古屋市が舞台になるんだろう。(Sep.11, 2003)

ハワイ 山中速人著 岩波新書 218ページ 650円 1993年7月
 ハワイに行く前には、ガイドブックやショッピングガイドだけでなく、この本を読むのも良いだろう。ハワイにはポリネシア系、白人系(コーカサス)、日系、韓国系、フィリピン系など他民族が住んでいる。アメリカ50州の中で唯一白人がマイノリティである州なのだ。それぞれの民族はハワイにおいてそれぞれの歴史を持って生活している。真珠湾の奇襲と太平洋戦争はその後のハワイの日系人に大きな影響を及ぼしている。この本を読んハワイを訪れると、今までと違ったハワイが見えてくる。(Sep.11, 2003)

地震とマンション 西澤英和・円満字洋介著 ちくま新書 222ページ 680円 2000年12月
 1995年の阪神淡路大震災では木造家屋だけでなく多くのマンションも被害を受けた。被害を受けた多くのマンションが公費で取り壊され、結局建て替えられてしまったが、筆者らは多くは改修ができたはずであると主張する。改修して元通りになるだけでなく耐震性を増すこともできるし、コストも安くなる。このことは私にとっては大きな驚きであった、と同時に目から鱗が落ちる思い出もあった。大災害が発生すると、コストとか環境問題が吹っ飛んで、多くの税金が投入され、多量のゴミが発生する。災害で見直すべきことはまだまだある。(Sep. 11, 2003)

飛行機に乗ってくる病原体ー空港検疫官の見た感染症の現実 響堂新著 角川Oneテーマ21 204ページ 571円 2001年9月
 世の中でSARSが話題になる前に出版された本。新潮ミステリー倶楽部賞島田荘司特別賞を受賞し、医者である著者が、かつて勤務していた空港検疫官の経験と分子生物学・ウィルス学の知識をもとに執筆されたもの。かつての黒死病(ペスト)のような歴史的感染症事件や最近心配されている西ナイルウィルスなど国境を越えて拡がる病気について分かりやすく書かれてある。日本人にとっては馴染み深い「はしか」も、ヨーロッパに持ち出すと大変な感染症になるなど我々の盲点となっていることも書かれてある。そういえばアメリカ入国の際にCDCからもらった黄色いカードには「この患者は感染症のある国を旅行した」とかなんとか書いてあった。あれは日本のことだったのか。今後も我々は国境を越えてやってくる病気とは無縁ではいられない。一度読んでおくと良い本である。(Sep.10, 2003)

火山に魅せられた男たちー噴火予知に命がけで挑む科学者の物語 ディック・トンプソン著 山越幸江訳 地人書館 439ページ 2400円 2003年3月
 アメリカ地質調査所(USGS)の火山学者が火山噴火予知に挑む様子を記したノンフィクション。USGSとは日本では気象庁と国土地理院と地質調査所(現産総研)と防災科技研を一緒にしたような組織。火山噴火予知と防災にも深く関わっている。1980年のセントヘレンズ山の大噴火をきっかけとしてUSGSの研究者が世界の火山の噴火予知にどのように関わっていったかを、実名で記した興味深い本。自然災害を予測する際に生じる地域住民との軋轢や、研究者の性(さが)、が非常に生き生きと克明に記されている。現在はハワイ火山観測所所長のDon Swanson, 1991年6月3日の雲仙火砕流でなくなったHarry Glicken、たびたび日本を訪れているCris Newhall、地滑り学者で変わり者で有名なBarry Voightなど、私が直接知っている人々が小説に出てくる奇妙さを味わいながら読んでいる。従来にない視点から火山噴火予知を扱ったものとしてユニークな本である。(Sep.10, 2003)