2006年度年次報告会

名古屋大学環境学研究科レクチャーホール(環境総合館1階))
2007年3月27日(火) 8:50開始
プログラム(PDF128KB), 要旨(PDF330KB)



2007年3月31日に退職された安藤雅孝教授の最終講演
安藤雅孝教授は2000年に名古屋大学に着任されました。以来2007年3月31日までの7年間、地震火山・防災研究センターの発展に多大な貢献をされ、南海トラフの巨大地震の研究や海底地殻変動観測手法の確立など地震学の幅広い分野に大きな成果を修められました。また、ひとたび大地震が発生するといち早く現地調査に赴き、被災状況をご自身で聞き取り調査するなど日本列島だけでなく、海外の地震調査にも積極的に参加され、スマトラ沖の津波調査においても詳細な現地の報告をされるなど、幅広いフィールドで活躍されました。
海底地殻変動観測が必要とされる日本列島周辺の海域

1. はじめに
一般に、琉球海溝沿いには「巨大地震が発生しない」と考えられている。じっさい、歴史的にも、広域に被害を与える巨大地震や巨大津波が発生したとの記録は残されていない。しかし沈み込みに伴う巨大地震は、本当に琉球海溝で発生しないだろうか?“過去に起きていない”というだけで否定して良いだろうか?
2.アンダマン・スマトラ地震の発生
この地震が発生するとは誰も予測していなかった。その主な理由は、@過去に起きた地震の規模が小さい、Aプレートの沈み込みの速度が小さい、B海洋プレートの年齢が6Ma以上で古い、C背弧海盆拡大が進行して伸張場と考えられていた、などが挙げられる。これらは、この地に超巨大地震が発生しない、との考えを支持するものであった。地球科学的“常識”が働かなかった例である。
3.南西諸島プレート境界地震
仮に、南西海溝プレート境界に固着域が存在し、バックスリップが1000年間累積したら、80mのすべり量に相当する歪みが蓄積されていることになる。もしもここに地震が発生したら、海溝付近の浅いすべりのため、ゆっくりすべりを伴った巨大津波地震となる可能性が高い。じっさい、琉球海溝にこのようなマグニチュード9の地震が起きる可能性があるのだろうか?上記の疑問を解明するには、沖縄本島沖での海底地殻変動観測を実施する必要がある。この目的には、広域の海底地殻変動観測に適した、キネマテックGPSと音響測距を組み合わせた手法を採用すると良い。
4.日本列島で特に必要とされる海域
名大が現在行っている海域以外では、下記の海域での調査が望まれる。
@ 1896年三陸沖地震発生源:三陸沖プレート境界が固着をしているか確認
A 宮城県沖地震のさらに沖合:海溝付近浅部に固着域が存在するか否か解明
B 福島沖:プレート境界に固着域が存在するか否か解明
C 日向灘:プレート境界に固着域が存在する否か解明
D 沖縄トラフ:背弧海盆拡大の確認
5.新しいシステムの開発
名大のKGPS・音響測距海底位置決定精度は5cm程度であるが、今後改善が必要である。さらに、海底地殻変動観測を、日本列島から世界に展開するには、新手法の開発も不可欠である。

2007年3月31日退職された技術職員
名古屋大学全学技術センター課長
宮島力雄
地震・火山観測とともに40年

 愛知県犬山市の山中に1965年に創設された犬山微小地震観測所の技官として翌年から勤務した。以来40年、今日まで一貫して地震予知や火山噴火予知研究の支援業務に携わってきた。犬山観測所に着任した当時は、地震観測網を増設中で新しい観測点に設置する増幅器等の機器作りと、地震の読み取りが主な仕事であった。慣れぬ手つきでトランジスターなどの電子部品を基板に組み込んだ観測機器を観測車に積み、新しい地震の観測点作りを行った。各地で起きる被害地震の余震観測などにも研究者と出かけた。絶え間なく地震が起きる中、地震計や観測機器を設置する作業の緊迫感。苦労して設置した観測システムが地震を捉えた、あの充実感は今でも忘れない。
 犬山観測所が1989年に地震火山観測地域センターへ統合された後は、雲仙普賢岳や神津島・御嶽山などの火山地域におけるGPS測量・水準測量に出向いた。有珠山や岩手山では、測量中に噴火や大きな地震に遭遇し、貴重な体験をした。また、火山噴火や地震時での地下水温の僅かな変化を捉える高精度な温度計の製作を研究者の指導で行った。開発した温度計は、温度センサIC方式(アナログ出力)と水晶温度センサ方式(デジタル出力)の2方式である。どちらの温度計も低消費電流で作動し、地下水温の連続観測が可能である。これらを、振り返る。


2006年度着任された研究員の皆様(発表順)
研究員
杉戸信彦
研究員
渡部 豪
研究機関研究員
羽佐田葉子
外国人特別研究員
Irwan Meilano


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